モヘアの手編みストール　父と満州のことから〜中国の思想・特に、老荘思想のこと

　この、ダイヤドミナのこのモヘアの入った糸を見た時、なぜか、父と満州のことを思った。満州の冬の空のように思えたのです（見たことないけど）。そして、おそらく父に影響を与え、私にも影響を与えた中国の思想（特に老荘思想）についても。ここではそのことを話します。

　父から、中国の思想について尋ねられたのは、小学校5年生の時だったと思う。家に中国の思想史の本が置かれていて（中国の思想史の本が置かれているあたり、明らかに、父が満州で暮らしたから関心を持ったのだろうと思うのだけど）父から「お前は、誰が好きか？」と尋ねられた。父は「俺は、韓非子が面白いと思う。物事を司る時には役に立つ」と言うので、私は、全部読んでいなかったので、少々ドギマギしながら、（子どもが読むには難し過ぎた）「老子とか荘子かなぁ？」と答えたら、「ふむ。そうか」と言われて、その時はそれで終わったのでした。
　それから、月日が過ぎ、美大受験に失敗して、大学で臨床心理学を専攻して（カウンセラーになることも視野に入れて）様々な心理療法の本を読み漁って、その時は、ユングに特別に興味はなかったのだけど、そのまま大学を卒業したのちに、ユングにどハマり。そして、ユングの著作は、邦訳が出ているものは、ほぼほぼ読んで、ユング派の著作もかなり読み、トランスパーソナル心理学や、ニューサイエンスの本もかなり読んで、行き着いたのは、ユングが関心を寄せていた、東洋思想（この辺のことを詳しく書くとマニアックな話になるので簡単に済ませます・笑）。老荘思想（というか道教）と易経にどハマり（20代後半の頃です）。そうして、中国発祥の思想に行き着いたその時、「あれ、そういえば、小学校5年生の時に、老子や荘子が好きだと父に言ったことがあったなぁ」と思い出した。ちょうどその頃、コテコテの編み込みのニットに出逢い、ニットにどハマりしながら、ユングも読み続けていた。ユング派の分析家を目指すか、プロのニットデザイナーになるか悩んだけど、結局、私は、どちらの道も選ばなかった。
　そして、夫の仕事の関係で愛知県に5年間住み、知的ハンディを持つ人たちと出逢い、彼らのことを童話に書くようになった。それを父にも読ませたら、滅多に人を褒めない父が、珍しく私のことを「お前は面白いものを書くようになったな」と褒めた。その時、父が、およそ、知的ハンディを持つ人に対して、価値を見出す人だと思っていなかったから、「あれ？」っと思った。父が脳梗塞で倒れる前の2002年の2月頃だったのだけど、ちょうど、その時、私は横山大観展を観ていて、横山大観の作品の中に「迷児」を見つけて、（横山大観・迷児で検索すると出てきます）その絵は、一人の幼児（当時の混迷した日本の宗教界の象徴）を取り囲む、キリストと、ブッダと、孔子と、その三人とは少し距離を置いて老子の姿が描かれていて、横山大観が老荘思想や道教に影響を受けていたことを知っていたから、その幼児が、横山大観の姿を投影していて、キリストや、ブッダ、孔子よりも、一人離れて上の方を見ている老子に、横山大観が共感したのだろうと思い、父に「横山大観展を観て、面白い絵を見つけた。『迷児』を観た」と何気なく言ったら、「お前も横山大観が好きか？俺も大観が好きだ。俺は、出張で東京に行くと、必ず、上野で横山大観を観る」と言うので、「えーっ」とビックリ。父は、東京に出張に行っても「榮太郎飴」しか買ってこない人だったから。まさか、父から、「横山大観が好きだ」と言う言葉が出てくるとは思わなかったのです。しかも絵とは縁遠い人だと思っていたから。その時、「父は、やっぱり中国の老荘思想に深く影響を受けているのだなぁ」と思った。父は「韓非子は面白い」と言っていたけど、本当に深く影響を受けていたのは、老荘思想だったのだろうなぁと。知的ハンディを持つ人のことを書いたお話を面白い・興味深いと言う父は、明らかに老子の影響を受けていると思った（『含徳の厚きは、赤子に比す』という老子の言葉を思い出したのです）。そのことを確認することもないまま月日は過ぎて、父は2019年に亡くなったけど、本当のところはどうだったのだろう？天国に持っていく宿題がまた増えた。
　そして、今、私は、父と満州のことから派生したことと、愛知県に住んでいた頃に関わった知的ハンディを持つ人たちのことから派生したことと、それらから導き出されたことといくつか、道筋も見えてきて、その方向で行こうと。基本「ニット・刺しゅう小物作家さん」が私の仕事と思っているけど、「他にすることがあるだろ！」と、すでに天国に召された、父や、祖父や祖母、親族・友人・知人たちから言われているような気分なのです。どうなるんだろう？

　でも、中国という国は面白いなぁと思う（実は中国茶も大好き！！）。中国だけじゃなくて、世界の情勢は気になるけど。コロナ禍を経て、「地球は、本来の、自然のそして、人間のあるべき姿に戻れ」と、神様は仰っているように感じるのだけど、どうなのかなぁ？

　ただ、地球の現状を見て、言えるのは、戦争は絶対にいけないということです。
この辺で呟くのはやめておきますね（相変わらず前振りが長い）。

　本来のストールの話に戻ります。ダイヤドミナの糸が、モヘアの入り具合が良くて、触っているともふもふ感があって、肌触りがなんとも言えず良いです。チクチクした感じはありません。以前出品した、ダイヤドミナで編んだ、「春待ちストール」よりも巾が2cm広く、長さが4cm短いのですが、同じ価格にしました。良い糸なので、お買い得だと思います。アレンジもしやすいと思います。洗濯は、おしゃれ着用洗剤で、手洗いしても、クリーニング屋さんの出してもどちらでも。ただし、最初のモヘアの感触は失われると思います。
　晩秋から、春先にかけて、ちょうどいいストールだと思います。お気に入りの作品に仕上がりました。

《使用糸》 ダイヤドミナ（国産）　ウール50％　モヘア（キッドモヘア）21％　ナイロン29％