丸底でかバッグ　夜の闇の中、もの思うビオラたち

　ビオラって、猫背で、うつむいて何かを思っているように見える。そういう花言葉があるのかなぁ？とネットで調べたら、パンジーが、もの思いに耽る人の顔に見えるので、フランス語の「思索」の単語「Pensee」から、パンジーという名前がついたらしい。ビオラは、属名の「Viola」が由来だとか。でも、パンジーとビオラの違いを調べたら、大まかにいうと、ビオラとパンジーの違いは花の大きさで決めていて、はっきりした違いは曖昧とのことで、そういうことなら、バッグのネーミングは「もの思うビオラたち」で良いと、作品のタイトルにしました。
　この「もの思う」は、私の大学時代の姿そのものです。その昔、大学生の頃は、何か問題に直面すると、とことん悩まなければいけないと思っていた。逃げないで真正面から取り組まないといけないと思って悩んだ。私が猫背なのも、悩んでばかりいたせいだろうか？悩んで落ち込んで、自信がなくなって、くよくよしながら、生きていた。唯一救いだったのが、ど天然なこと。でも、根っこに不安を抱えて過ごしていた。そんな私に、大学の同級生は、「逃げ道をたくさん作ればいい。とことん悩んでもなんの解決にもならない」と、アドバイスをくれたのだけど、そう言われると余計に、悩んで悩んで、悩み抜いた。いろんな本を読み漁り、友だちとたくさん話した。「真面目すぎるんだよ。もっといい加減でいい」とよく言われたものだ。でも、今にして思うと、たくさん悩んで正解だった。たくさん悩んだから、「悩んでも、正解があるわけじゃない、答えがすぐ見つかるわけじゃない、悩んだ時は、まず目の前にあることから片付けていけばいい、そうすると次が見えてくる」ということがわかったのだ。
　なぜこんな話をしているかと言うと、大学を卒業して、15年ほどして、私と主人の共通の友人の結婚式に招かれた時に、二次会に行ったら、大学時代の私と同じクラスの同級生が来ていて、「あれ、久しぶり、元気だった？私もおばちゃんになったでしょう」と声をかけたら、「今日は、あなたに会うためにだけに来たんです。今日あなたが来ると聞いたから来たんです。僕もあなたみたいに、大学の時、ちゃんと悩めばよかった。逃げないで真正面から問題に取り組めばよかった。僕は結局、いい加減な道しか歩めなかった。いまだに定職についていないその日暮らしです」と私に言ったのです。そして、「そのことをあなたに伝えたくて、今日ここに来たんです。あなたが正しかった」と、彼は言ったのです。そして、彼は、「じゃぁ」と言って、帰って行きました。それから20年以上経つけど、彼はどうしているのだろう？
　ちなみに、還暦のおばちゃんになった今の私は、「悩む暇があったら行動しよう！動けるだけ動け！」と、何かあると、しばらく動揺してから、気を引き締めて、対策を立てて、行動するおばちゃんになった。もう60歳になると、悩んでいる暇などない。人生100年時代になり、一昔前に比べたら猶予があるけど、悩んでる暇などない。タイムリミットがある。悩む暇があったら即行動するおばちゃんになった。でも、それがわかったのも、大学生の頃、悩み抜いたから。若い時には、悩み抜いていいと思う。もし、今、この文章を読んでいる人で、まだ、若くて、「悩み事があってどうしよう？」と考えている人がいたら、「悩めるだけ悩んでください」と私は言いたい。悩めるだけ悩む力があるということは、何かをやり抜く力がかなりあるという証拠だから、逃げずに悩んでほしいと思う。大丈夫！成長している証拠です。
　夜の闇の中で人知れず悩み思い煩うビオラたちに私は言いたい。「思い悩んでください」と。「そうして、思い悩む、貴いその姿を人々に見せてください」と。その姿は美しいのだから。
バッグを編みながらそんなことを考えていた。思い悩む姿を、私はみっともないとも、恥ずかしいとも思わない。逆に、美しいと思う。このバッグで、もの思うビオラたちの、その美しさを表現できただろうか？とんがっていて、悩んで壁にぶつかり、摩擦で角が取れ、柔らかに柔軟にしなやかになっていく姿を表現できただろうか？なんて、私の独りよがりの想いですが。そして、もう悩むことから卒業した人には、かつての自分自身を投影して「あんな時代もあったなぁ」と懐かしく思っていただけたらと思い製作したバッグです。「なんて、ただの可愛いビオラのバッグでいいのにね」（と、私の心の声）。
　下の段は、ビオラがたくさん咲いている姿。メインのビオラの図案は夜の闇の中で咲くビオラを。上の段は、ビオラと相性がいいスカビオサを編み込んでみました。
　今回かなり材料費がかかっています。久しぶりにコットンコナでベースを編みました。編み込みの糸は、コットンコナのほか、襲（廃番）を二本どり、ダイヤタンゴの二本どり、ウォッシャブルUV、スビンゴールド 、カブレ2005（廃番）、cotton true sport（廃番）、アプリコ（廃番）の二本どり、出来るだけ残り糸を上手に使うようにしましたが、糸代がかなりかかっています。裏地はリバティプリント。「CHECK&STRIPE」バージョンの、「Think of Me」。グレー〜ネイビー系のビオラの柄です。シックで洒落たイメージの生地です（写真を参考になさってください）。形を整えるために接着芯を使用しています。持ち手は、カフカリボン 。モノトーンの花柄。60mmのリネンテープ で補強しています。トータルで見て、可愛くて、シックなイメージで、と考えながらデザインしました。持っていると、心が弾むバッグになりました。ポッケは大きめなポッケを二つです。
　相変わらずミシンとお裁縫が苦手な私の腕と、高い材料費を考慮した価格設定です。持ち手のカフカリボン は、くしゃくしゃになって交換したいというのであれば交換可能です。4,000円ほどです（送料は別）。リボンの在庫がない場合はお取り換えはできません。また、バッグ本体と裏地は、手縫いで縫い合わせています。万が一、解けてしまった場合、お客さまの方で縫い合わせ可能だと思いますが、送料はいただきますが、当方での縫い合わせは無料です。また、メンテナンスには可能な限り対応いたしますので、何かございましたら遠慮なくご連絡ください。ただし、故意によるものには対応できません。ご容赦ください。もらってくださる方がいなかったら自分で使おうと思い作った究極の自分仕様の丸底でかバッグです。お気に入りの作品に仕上がりました。このバッグの形とサイズが今の私の定番、スタンダードです。色々試した結果、この形に納まりました（編み込む模様によってサイズは多少前後します）。
　また、以前記載したと思いますが、私はよくいろんな方から「編み物を教えてください」と言われるのですが、体力がない上に、ニット以外にもしていることがあり、応じるのが無理なのでお断りしています。その代わり、ネットにアップした作品に使用した糸の種類は出来るだけ詳しく記載しています。とは言っても、あまり詳しく書くと勉強にならないので、糸の種類だけ記載して、あとは調べてくださいという感じです。ある程度ニットをやっている方なら、調べればわかるという範囲内です。編み込み好きが増えるといいなぁと思いながら記載しています。

《使用糸》 コットンコナ コットン100％
　　　　　スビンゴールド コットン100％
　　　　　カブレ2005（廃番）コットン100％
　　　　　アプリコ （廃番）　コットン100％
　　　　　ダイヤタンゴ コットン45％　アクリル50％　キュプラ3％　ポリエステル2％　
　　　　　ウォッシャブルUV　コットン50％　アクリル50％　　
　　　　　襲（廃番）シルク100％
　　　　　cotton true sport（廃番）　コットン100%
《裏地》 リバティプリント（タナローン ）コットン100％
《持ち手》 カフカリボン ドイツ製
　　　　　リネンテープ リネン100％　ドイツ製