いい ちいさな ものづくり
極上の着心地を尾州から。一年の歳月をかけて育まれる、blanketの一生もののダッフルコート
ー作り手
10年後も変わらず着られる、一生物のダッフルコート。
「尾州」とは、愛知県一宮市を中心とした、愛知県尾張西部エリアから岐阜県西濃エリア一帯を指します。古くから毛織物の産地として有名なこの地では、羊の毛から品質を見極め、さまざまな種類の生地に加工し高品質・高性能なウールを生産しています。イタリアのビエラ、イギリスのハダースフィールドに並び、世界三大毛織物産地として日本の毛織物を代表するこの地で、blanketは極上のダッフルコートを生み出しています。
blanketのダッフルコートは「10年後も気持ちよく着られるように、一生物になるように」と着心地の良さを追求。生地から縫製までどの過程にもこだわり抜き、生地はカシミヤ入りの紡毛糸を二重織りという特殊な技法が採用されています。上質なウールカシミヤの混紡糸を通常の何倍もの時間をかけ、低速で丁寧に織り上げることで、糸に余分なテンションがかからず、密度が高くてもしなやかでふんわりと空気を含んだ生地になるそうです。
またブランドの理念を集約する刺繍ラベルは一宮市の老舗刺繍メーカーが手掛けており、折り紙をモチーフにデザインされた羊のブランドマークには「羊をおる(織る)こと」「日本らしさ」「親しみやすさ」というメッセージが込められています。
コートの顔となるトグルボタンは、岐阜県高山市の木工玩具工房の職人が樫の木を一点一点削り出して作製し、
ずっしりとしながらも滑らかで毎日触りたくなってしまうような心地よいボタンに仕上がりました。
生地だけでなく、ボタンも手に触れる大切なパーツのひとつ。ダッフルコート特有の細長い形状のトグルボタンは、硬く丈夫な樫の木から手作りされています。使っていくうちに手の脂で少しずつ風合いが変わり、自分だけのボタンになっていくことも魅力の一つだそうです。
今年から発売される新色「ハマグリコート 生」は、生ウール・生カシミヤを使用した無着色、無添加の自然な色合いと着心地を楽むことができます。カシミヤ特有の茶色とウールの白が混ざり合う天然由来の色味になっており、素材そのままのナチュラルな風合いを持つことが特徴です。どんな色とも相性が良いので、中に着る服を選ばないところもポイントです。
この「ハマグリコート 生」と一対をなすのが「ハマグリコート 漆黒」です。この漆黒は漆による黒をイメージし、生地や刺繍糸だけでなく、補強テープやラベルまで全てを黒にこだわっています。
特に力を注いだのが、福井県越前市の漆職人さんと共に作り上げた”漆ボタン”。
日本最古の塗料であり、天然で最も強いと言われる漆。
ハマグリコートのシャトルボタンをベースに、四度塗り重ねることで艶やかで深みのある、漆でしか表現できないぽってりとした光沢が生まれます。
ウールの柔らかな風合いに、しっとりと輝く漆塗りのボタン。ロゴマーク状に本金を刷り込む”沈金加工”が施されています。尾州産地の技と、越前の伝統が交わりあう、とっておきの日本のダッフルコートとなっています。
ーものがたり
blanketを運営するのは世界三大毛織物産地 尾州で創業99年の老舗生地メーカーです。
自社の極上のメルトン生地を使って一切の妥協をせず、尾州にしか作れないコートを作りたい。
職人の技術と想いを商品を通じて伝えたいと考えてブランドをスタートさせました。
手軽に安価に洋服が手に入るようになった今、服に強く愛着を持って身につけたり、長く大切にする機会が減ってしまっているのではないでしょうか。blanketのスタッフさん、そして尾州の職人さんたちは本当に良いものを肌で知っているからこそ、大切に長く着たくなる「お気に入りの一着」を届けたい、尾州だからできる商品を作りたいと強く感じ、このブランドが始まりました。
尾州産地で作られた生地や縫製の良さはもちろん、通常の服作りではありえないことを実現しています。
その一つがコートの名前にもなっている「ハマグリ刺繍」です。
尾州らしさはコートの端の処理にも表れています。写真にある通り、生地の端のほつれを防ぐ処理に特殊な刺繍「ハマグリ刺繍」を採用。通常であればコートの端はパイピングというテープで端を包む処理、もしくはロック始末という生地の端をかがり縫いする処理をします。
この2つはそれぞれ利点・欠点があるそうで、パイピングはデザイン性があり、強度が非常に強い。ただし、着心地がごわついてしまう。これは特にパーツが集まる脇付近で顕著だそうです。
ロック始末は伸縮性があって着心地が良い反面、強度が弱く見栄えがしない。
このハマグリコートに採用している「ハマグリ刺繍」は、伸縮性があり強度も強く、さらに着心地も邪魔しません。しかし、ハマグリ刺繍用の国産特殊ミシンは廃盤で扱える職人もほとんどいないこと、そして全ての生地の端を刺繍するには大変な労力で時間がかかってしまうのが難しいところです。
それでも職人の技術を知ってもらいたいという想いからこの加工を採用されており、たった1人の職人さんがハマグリ刺繍を施しているそうです。
このほかにもblanketは糸作り・生地作り・ボタン作り・刺繍・縫製と全てをオリジナルで制作しているため、1年かけてコートを作っています。昨今のコストダウン・短納期なものづくりとは真逆の作り方をしているからこそこれまで体感したことの無い、極上の着心地が生まれます。
多くの物作りで分業が当たり前になった現代において、全てをオリジナルで行うblanket。どの工程・パーツにも妥協しない姿に、尾州の誇りと物作りへの深い愛情が感じられます。
ー想い
ブランケットのように軽く、身体を優しく包み込む、そんなコートでありたいという願いを込めています。
何人もの職人さんの技術と、尾州という産地への誇りが、このダッフルコートを実現しています。素材一つ一つに施された丁寧な物作りが、ボタンや縫製の手触りが、どこかなつかしく朗らかな気持ちにさせてくれることでしょう。
そして、このダッフルコート通じて尾州の魅力を伝えたい、尾州のファンを少しでも作りたい、そんな産地への熱い思いも込められています。ブランケットのように優しく心地よく包んでくれる、blanketの極上のダッフルコートの着心地を、ぜひ体験してみてください。
2021年9月22日