いい ちいさな ものづくり
“無秩序な多様性”から生まれる、一点ものの作品たち。作家の個性が輝くHARTHのコンテンポラリー・ジュエリー
—作り手
コンテンポラリー・ジュエリーブランドとして作品を発表されているHARTHさん。
あまり耳慣れない言葉ですが、コンテンポラリー・ジュエリーとは、素材を問わず作家のコンセプトに基づいて制作するジュエリーのこと。アート・ジュエリー、スタジオ・ジュエリー、オーサー・ジュエリーなどとも呼ばれます。一方、金やプラチナ、宝石といった高価な素材を使用しているものをファイン・ジュエリーと呼び、ガラスやプラスチック、合金といった安価な素材を使用しているものをコスチューム・ジュエリーと呼びます。
コンテンポラリー・ジュエリーのはじまりについては諸説ありますが、第二次大戦後、欧州やアメリカで発展した"自己表現としてのジュエリーをめざす動き"という説が有力だそう。「ありきたりなデザインから脱却し、際立った個性でジュエリーの新風を巻きおこす」という意図や「ジュエリーを芸術作品として認めさせる」という意図が込められているそうです。
日本ではまだ馴染みが薄いですが、海外では国際コンペティションが開催されるほど注目されているんだとか。
私たちのジュエリーはアクセサリーだけではなく、一つ一つがアート作品となっています。
作品の一部はチャリティージュエリーとして販売されており、売上の30%は、保護猫シェルターへ寄付されます。
目を閉じて水を味わっている猫の姿を細かい毛並みまで再現し、水は天然石で表現されています。シルバー925を使用し、天然石はエチオピアオパール、ホワイトムーンストーン、ミスティックトパーズ、アメトリン、ローズクォーツの5種類から選べます。
—ものがたり
HARTHでは、夫の前島一夫さんがジュエリーデザイナーを、妻のアリーナさんが販売とデベロッパーを担当。愛犬モモちゃんも、新しいインスピレーションを与える存在として2人を手伝っています。
幼い頃から、物作りや輝きがあるものに惹かれてきた人生でしたので、必然的にジュエリーを学び活かす環境に入る道を選びました。
約10年前、最先端のカルチャーを発信し続ける渋谷に校舎を構えるヒコ・みづのジュエリーカレッジを卒業。ジュエリー会社に勤務し、経験を積んでこられました。
日を追うごとに想像力が増し、それを具現化できる技術を得てからは、とにかく溢れ出るアイデアやデザインで「どれだけの人たちに喜びを感じてもらえるのか、共有できるのか」を知りたくなりブランドを始めました。
その後ご結婚され、ご夫婦お2人でジュエリーブランドを立ち上げられたそうです。
一夫さんは、全てのジュエリーに心を込めて丁寧に作るため、周りから「繊細」と言われるのだとか。アリーナさんは明るい人柄で、お客さんから気軽に声をかけられ、お話をすることも多いそうです。
—想い
ジュエリーというアートで、私たちの心とお客様の心が繋がり、素晴らしい人達と巡り合うことができているため、心(Heart)+ART+心(Heart)という意味を込めて、HARTHというブランド名になりました。
ブランドのコンセプトは"無秩序な多様性"。デザイナー自身が決まった形の変化でデザインを繰り返したくなく、幅広く多様性に富み、時間の経過と共に無秩序にデザインが広がっていく物作りを目指すことがコンセプトの由来となっています。
"無秩序な多様性"という言葉通り、これまでの作品作りを通して様々な挑戦をされてきたそう。最初は、「綺麗に輝き、ディテールにこだわった物を作りたい」と思い、身体に焦点を当てたそうです。
微妙な凹凸で見た目が大きく異なるので納得がいくまで進めることで細かい再現力と技術を得ました。
次に「人間が得られる技術以外で、唯一無二の物が作れないか」を探す実験の日々が続きました。
様々な物を集めては実験の繰り返しで、特異な素材と素材を掛け合わせ時間の経過や環境によって形が変わる、オリジナルのテクスチャーを手に入れました。
グレーパールとシルバーのこちらのピアスは、メッキを使用していないため、時間の経過と共に自然に所々黒くなり、凹凸が目立っていきます。
さらに次のステップでは「自然が作ってくれた芸術・動植物たちを、細部にこだわり躍動感のある物に落とし込む欲求」に駆られたそうです。
彼らの仕草一つ一つが愛おしくそれをジュエリーで表現し手にとってくれた方に愛着が湧いてくれるほどの、魂を込めることのできる心をいただきました。
製作方法は通常、ロウを削り形を作り上げていくのですが、私たちはロウを溶かして形を作る特殊な方法で原型を製作しています。ロストワックス鋳造という製法でロウ(原型)を石膏で覆い固め、高熱でロウを溶かし除去した空洞に、金属を流し込み、手作業で磨き上げてお客様にお届けをしています。
素材はシルバー925を主体に、ゴールドや世界各地で採れた天然石などを使用。サスティナブルも重視しており、金属や天然石は再利用して使うことを意識しています。
現在、私たちが特に力を入れているのが、動植物たちへの寄付活動です。私たちも飼育放棄され死の寸前だった犬を保護していますし、保護活動をされている方たちと接して本当に大変な思いで活動にあたっているのが分かり、寄付をすることで少しでもお役に立てたらと思い始めました。
猫モチーフのジュエリーは全て、売り上げの30%が保護猫シェルターととの森 へ寄付されます。購入する楽しさだけでなく、同時に動物たちの手助けもできるジュエリーです。
既存の概念に囚われず、作家の個性を大切にするコンテンポラリー・ジュエリー。世界にふたつとないそれらは、特別なジュエリーとして、私たちの生活に新しい刺激を与えてくれるかもしれません。
2021年12月2日