いい ちいさな ものづくり

使い手の暮らしに「美しい所作」を提案する。自然素材を生かす“手のしごと”が心地良い、KAKURAの革製品

—作り手

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ナチュラルに仕上げられた上質な牛革が目を引く「KAKURA(カクラ)」の作品たち。ペンケースや手帳カバーなどのステーショナリーに加え、レザークッションやのれんなどのインテリア小物や、バッグも制作しています。

ブランド名のKAKURAの由来は、先住民族カクラ族から。デザイナーである石原ゆかりさんは、彼らの中にある「人は自然の一部であり、自然の恩恵を生活の道具にして暮らす」という知恵から“ものづくり”の意味を見出したそうです。

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「大切なことを再生すること」が「人の心に響く」ことに繋がると考えます。

ブランドの基本テーマは、先住民族の暮らしを見習って「本質を見る目」、そして「大切なものの再生」。生活に潤いを与える道具をできる限り環境に配慮した素材でデザインし、手しごとで制作を行っています。

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KAKURAの作品のデザインコンセプトは3つ。

一つ目は「日本のデザイン」。日本人の精神性が現れる風習をデザインに取り入れています。

二つ目は「必要最小限のデザイン」。“用の美”=使うための機能  をデザインし、これから先、変えようのない形を目指しています。

三つ目は「温もりもデザイン」。 愛着が持てるデザインを目指し、“人の手×自然素材”という選択をしています。

—ものがたり

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当時「日本人の心に響く、日常使いの日本の文具」が見つからなかったことが、ブランドを始めるきっかけとなりました。

ブランドが立ち上がった1998年、当時はアジアン雑貨や輸入雑貨が増え、100均ブームも相まって、色とりどりの安い製品が世の中にあふれていました。その中で、しっかりとした「日本」を感じる素材、デザイン、色の製品に出会うことは、なかなか難しかったそう。そこで「それなら自分で作ろう!」と思い立ち、ブランドコンセプトを考え始めたそうです。

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元グラフィックデザイナーである石原さんは“紙好き”で、大好きな紙と、日本の竹を使ったノートを作ったのがスタートでした。翌年には紙と竹だけでなく「紙と陶器」「紙と陶器と竹」など、異素材をデザインで繋ぐプロダクト開発を始めます。

KAKURAではそばにあるとほっと心が和む素材を選んでいます。
人だけに備わった「感性」に響くのは、自然から生まれたことを感じる素材。
一つだけの素材に特化せず、違った素材同士をデザインで結びつけることで、単体の素材よりも新鮮な印象になることを知ってもらえたらと考えます。

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革製品の制作を始めたのは2001年から。「革を製品に取り入れて欲しい」という革屋さんの要望を受け、独学で革を使った小物づくりをスタートしました。今では作品の9割を革製品が占めているそうです。

—想い

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KAKURAさんは、エコ基準をクリアした牛革を使用しており、いわゆる革臭さ=薬品臭がほとんどしません。エコ基準とは、革の製造工程で薬品の使用量を極力抑えるなど、環境面への配慮・革としての機能・加工法などが細かく定められています。

生涯傷や、裏面の血筋も隠さない“ナチュラル仕上げ”という製法で、型押しなどの加工も施さず、革本来の自然な風合いを感じることができます。

料理と同じく、良い素材はあまり複雑に調理せず、素材の持ち味を活かしたデザインを心掛けています。

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工房での製造は、まず手作業でカットした革に革槌で縫い穴を開けます。そして、使うシーンを想像しながら一針一針手縫いで仕上げていきます。

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商品に対してまずこだわっていることは、軽さ。革は重い!というイメージを払拭すべく、裏に別革を一切貼っていません。製品はペンケースやブックカバーほか、中にものを入れて使う道具としてのアイテムがほとんど。そのため、それぞれの目的によって革の厚さを変えています。

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たとえばブックカバーはあえて1mmと薄くし、本を感じ、また開閉のしやすさにつなげています。A5システム手帳の場合は、中身に直接沿うのではなく、全体を巻くようにカバーするので1.8mmとやや厚め。しかし、裏革を貼らない分、しなやかさは損なわれません。

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また、できるかぎりボタンやホックなどの金具を使わないそうです。革紐で巻くなど、使う所作も楽しめる「日本のデザイン」を心掛けています。袋に紐を巻き付けて閉じ、懐や袂、帯の間などにスッと収める動作は、日本に古くから受け継がれてきた、美しく粋な所作です。

この紐巻きペンケースによって、日本が誇る美しい所作を忘れることなく、後世へ残していくきっかけになれば大変嬉しく思います。

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KAKURAのプロダクトは、つかい手の方への提案を込めています。
それは素材の使い方であったり、機能面での工夫といったことで表現しています。
 「日々の暮らしをデザインする」 気持ちで、つかい手の心を豊かにすることを目指した製品開発を行っています。

軽量化のためのデザインや製造の工夫、素材選びだけではなく、さらに、デザインが心理面に与える効果も考えられています。「デザインの余白」を設けることにより、それを使う人自らがどのように使うかを選択でき、自分らしい使い方を見出すことができるのです。

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例えばシステム手帳なら「必要な時に別売のレザーポケットが足せる」、紐巻き仕様の製品は「中に入れるボリュームにあわせて革紐の巻き方で調節できる」など、使う人の状況や気持ちによって柔軟な調整に応えられるようにできています。

“愛着が湧き、永く使いたくなるもの”を心掛けて、日々時間を惜しまない「日本のものづくり」に取り組んでいます。

上質な素材を使って、職人が丁寧に作った革製品。使い込むほど味が出て、色は深みを帯び、手に優しく馴染みます。そうして育てた革製品は、世界でたった一つ、自分だけの作品です。

長い時間を共にする人生の相棒とも呼べる存在。そんな存在に、KAKURAさんの革製品はいかがでしょうか。

—作り手情報

2021年10月13日


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